「まだ、就職したくない」という目的
新規学卒就職者(新卒生)の就職後3年以内離職率は約32%(厚生労働省発表)、つまり約70%の方は新卒採用された企業で3年以上働くことになります。できれば一度職歴を4年以上お持ちの先輩に聞いて頂ければと思いますが、就職してからの3年はキャリア形成が出来上がる非常に重要な時期で、この3年間をどこで、誰と、何をするかによってその後のキャリアは大きく異なります。
しかし新卒生の中にはこの貴重な3年間の過ごし方について定まっていない方も多く、「なんとなく人気の企業を受けた」、「昔から興味があり楽しそうだからこの分野に進んだ」、という方も多いのではないでしょうか?そういった将来のヴィジョンが定まっていない、将来働きたいフィールドや業務内容などの希望が決まっていない、そのため「まだ、就職したくない。」という理由で大学院留学を目指す方が多いという印象があります。
そのように聞くと少しネガティブな印象がありますが、最も重要なキャリアのファーストステップが定まっていないのであれば、大学院留学を通してキャリアヴィジョンを明確化してからキャリアをスタートする、といった道をご検討頂くことも可能ではないかと思います。
大学/大学院生
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キャリアゴールを決めるため。
弊社にご相談に来られる大学生の皆さんの多くは、人生の中で非常に重要なキャリアスタートの3年間を始める前に、やりたい事や、なりたい者を決めるうえで、大学院留学を目指す方が多いのが現状です
海外の大学院には600以上の専攻があります。それらの専攻を見ているだけでも将来のキャリアの選択肢を具体的に想像することができますし、希望のフィールドだけでも決まっている方は留学後現地で学びながら定めていくこともできます。
例えばビジネスの学位であるMBAには、マーケティング、ファイナンス、アカウンティングやPRといった副専攻が整備されており、幅広くビジネスを学びたいながら自身の専門分野を決めることが出来ます。国際開発であれば人権、環境、経済、教育や衛生学といった副専攻があり、本当に興味のある分野を現地で経験を積みながら決めることが出来ます。
もう一つは、特に理系の方で、希望する研究を日本で続けるのが難しい、または海外の方がより進んでいる、大学での研究を社会貢献に直接繋げる方法を学びたい、といった理由を持った方々です。
研究したい分野を研究することが難しい、例えば研究したい分野が日本にはない、研究室に入れれない、または担当教官と揉めてしまった、などの理由で日本の所属大学で研究を続けることができない方が、海外の大学院を目指すケースです。ひと昔前と異なり、海外の大学院では教授からの推薦状を課されない学校も増えており、推薦状なしでも目指すことも可能になりました。
もう一つは、日本より海外の方が研究開発が進んでいる場合です。例えば昨今話題となっているChatGPTに代表される対話型AIも、BardやLLaMAといった世界を席巻している企業はすべて海外資本です。またコロナ禍で提供されたワクチンはすべて米/英国の製薬会社ですし、コロナの各種統計は米国のジョーンズホプキンス大学が中心に世界中に発信していた事も記憶に新しい方も多いと思います。
そういった意味でも、希望する研究分野が間違いなく海外の方が進んでいるのであれば、海外大学院への進学を目指す大学生が増えるのは必然だと思います。
もちろんその他にも、海外就職を目指す、最終学歴を塗り替えたい、まだ就職より勉強を続けたい、といった様々な目的を日々伺いますが、そのすべてに意味があり、深く検討する意義のあるものだと考えます。
大学/大学院生
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「新卒」で大学院留学を目指すリスク
現役大学生が大学院留学を目指す場合、そのリスクも同時に理解しておくことが非常に重要です。
現役大学生が大学院留学を目指す場合、「まだ就職をしたくない。」この理由が一番多いのではないでしょうか?
ただ、「まだ就職をしたくない。」といってもその理由も様々で、「希望する就職ができなかったから」、「どんな分野に就職していいか分からない」、「将来やりたいことが決まらない」、「漠然ともう少し学生をしていたい(学びたい)」と様々かと思います。ただ共通して言えることは、「まだ就職したくない。」ということです。
過去就職氷河期と呼ばれていた時期は、現実的に「就職ができないから」という理由も存在しましたが、今は多くの企業が人材確保に翻弄する時代ですから、新卒の大学生が就職ができない、ということはないと思います。では就職を先延ばしにて本当に大丈夫なのでしょうか?さらに言えば新卒での就職活動を蹴ってまで大学院留学を目指す事にリスクはないのでしょうか?
答えはNOではないかと思います。今も昔も様々な理由から新卒での就職活動は中途採用に比べるとアドバンテージがあるものです。例えば中途採用枠で就職活動をすると、人事採用係は面接時に、「この人材がうちに入ったらどの程度働くことができるだろうか?どの部署でどういった業務をこなしてもらおう??」とったある程度の“計算”をします。入社後の働きを計算できる人間、つまり即戦力になる人材を探しています。
そのため中途採用の場合は、面接官に即戦力として働くことができるということを分かりやすく証明しなければなりません。それは英語力やリサーチメソッドといったスキルである場合もありますし、経営学や会計学といった専門知識である場合もあるでしょう。
また一定期間同業他社での業務経験もアピールポイントになります。同業他社で結果を出しているのであれば、同様の環境があれば同様の結果が出せる人材という計算を面接官が立てることができます。
一方新卒での就職活動ではいかがでしょうか?おそらく人事採用係は、「この人材を教育して~の部署で活躍してもらおう、~部署に入れて営業を学ばせ将来は商品開発部で活躍してもらえるかもしれない、、」といった入社後に教育をして会社に貢献できる人材に育ってもらおう、というスタンスで人材を選びます。
つまり即戦力である必要がない訳です。入社後に社会人としてのマナーや業務、才能を磨きスキルを伸ばしていけばいいのです。そのため新卒の就職活動でPRすべきは即戦力で使える知識やスキルではなく、将来のポテンシャル(潜在能力)なのです。このように新卒で就職活動を行う利点は即戦力を求められていないので入社後も充実した教育を期待することができます。
一方途中採用で入社すると充実した教育は期待できません、短期間の教育期間を経て即戦力として現場に出なければなりません。このように即戦力して期待される能力を証明することなく就職活動ができることが新卒で就職活動をする最大の利点と言えるでしょう。中途採用枠では非常に門戸の狭いような大企業でも新卒には非常大きな門を開いているケースも多々あります。
これには大企業がまだ余計な影響受けていない新卒生を採用し企業の都合に合わせた人材の育てたいといった目的を入っていると思いますが、いずれにしても新卒で大学院留学をするということはこのような新卒での就職活動を諦めなければならない場合も多いというリスクを常に意識する必要があります。
大学/大学院生
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専攻を変えるため。
特に現在日本の大学で理系を専攻されている、大学院に在籍している、または既に日本で大学院を卒業された方が海外の大学院進学のため弊社にご相談に来られることも珍しくありません。なぜなら、海外の大学院では今までの専攻とは違う専門分野にもチャレンジできるからです。
日本で大学院まで進学したが、今までとは違う専門分野を学びたくなってしまった、将来の方向性が変わってしまった、という方が海外で再出発を図っているようです。
例えば日本で文学部だった方が、コンピューターサイエンスの分野に進むこともできますし、心理学とまったく関連ないことを大学で学んだいたとしても、臨床心理学の道に進むこともできます。
もちろんMBAなどのビジネス関連のコースは大学時代の専攻を問われることはありませんし、会計学などを選んでUSCPAなどの資格取得にチャレンジすることも可能です。
もちろんある程度の制限はありますが、日本と比べると非常に専攻チェンジの門戸は広いと言えます。
大学/大学院生
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海外大学院進学を目指す「新卒生」とは。
大学院留学を実現させ、“どんぐり”の中から頭一つでも飛び出してから就職活動を行いたいと思う方が増えているのです。
実は大学院留学をすると新卒で就職活動を行うことができないと思っている方も多いのですが、それは間違いです。皆さんもご存知かと思いますが、新卒での応募条件は令和~年卒業、または令和~年卒業生まで、というような記述がしてあります。
つまり卒業する際の年齢はそれほど重要でないわけです。もちろん年齢制限を設けている場合もありますが、大学を卒業した年に大学院へ進学したのであればそれは進学ですから、通常新卒扱いで就職活動ができるわけです。
それではなぜ大学院留学をすると新卒枠での就職活動にこだわらなくなるのでしょうか?理由は2つで、一つ目は即戦力としてアピールできるスキル、知識、そして経験を持っているためです。もう“どんぐり”になる必要はないというわけです。
二つ目の理由は、将来のキャリアが明確になるため就職活動を行う業界が限られるためです。新卒で就職活動をされている方の中には、「銀行や証券も受けたし、電子通信やアパレル、教育サービス、商社やフォード産業も受けました」という方が数多くいらっしゃいますが、将来どういった分野でキャリアを構築していきたいか、ということが決められていないのだと思います。
そのため業界で狭めることができませんから、どうしても社名や規模、イメージで決めてしまい大企業のみを受けるということになります。しかし大学院留学実現者は違います。通常真剣に一つの分野を一年~二年海外で学んでくると、将来自分がどのような分野で活躍していきたいのか、ということが見えてくるものです。そうなると闇雲に面接を繰り返すわけではなく、自分が将来勝負したい分野に絞って就職活動ができます。そうなると海外で培ってきた知識や経験、スキルがありますから、新卒にこだわる必要がなく、新卒、中途問わず迷うことなく就職活動に邁進できるはずです。
以上のように大学生活で見つからなかった将来のキャリアゴール、そして自らのキャリアプランを大学院留学で見つけようとする方も増えています。
では就職してから働きながら、現場を経験しながら将来のキャリアゴール、自分が将来の時間を賭けて勝負したいフィールドを探しても良いのでは?という意見もあるでしょう、ただ日本はそれをするには少々不向きな国という現状があります。なぜなら日本は非常に新卒で就職した後の転職が難しい環境にあるためです(詳しくは「新社会人の方へ」をご参考下さい)。