【コラム No7】理系大学院留学の誤解と正しい知識
【コラム】理系大学院留学の誤解と正しい知識
~研究留学を目指す皆さんへ~
今回は理系出身者の方の大学院留学について詳しく解説させて頂きたいと思います。
最初にここでの「理系大学院留学」の定義をしたいと思います。理系大学院留学とは研究に重きを置き、基本的にはPhD(博士課程)まで目指す研究留学を目指す方を対象としています。また、専攻に関しては自然科学、工学系だけでなく、文系として認識されている心理学、経済学も入ります。
理系大学院留学を目指す場合、少し誤解をしている方が多いので最初に正しい知識を解説させて頂きます。
理系大学院(研究留学)は奨学金などで費用がまったくかからず、通常生活費も学校から提供されると思われている方がいますが、こういった状況は通常PhD(博士課程)コースに入学された場合のみです(成績や研究実績が非常に優秀な方は最初から費用を提供してもらえるケースもあります)。
通常PhD(博士課程)のコースでも、Master(修士課程)コースから始まることが多く、その場合はMasterコースは研究ではなくクラスを履修しコースが進んでいきますので、クラスの履修費用はかかります。滞在費に関しても特殊なケースを除くと学校から提供されることはありません。ただMasterコース終了後に無事PhDコースに入学できれば、その後はクラス履修の義務は通常ほとんどありませんので、クラスの履修費用はかかりません。
理系大学院留学を目指す方で最も大事なことは、
「英語で研究実績と研究希望分野に関しては解説は可能か?」
ということです、
これが出来る方は学校担当者に解説が出来、PhDコースに直接出願することができます。
ただそもそも、
「研究実績と呼べるものがほとんどない」、
「大学院入学後に希望する研究分野が決まっていない」、
「研究実績や希望研究テーマはあるが英語で解説することができない」
といった場合、PhDコースに直接出願することはできません、
ではその場合どうするか、
それは入学を希望する国によって方法が変わります。
【アメリカ】
PhDコース(博士課程)とMasterコース(修士課程)がジョイントされているコースと、分かれているコースがある。前者の場合は通常PhDコースにもMasterコースにも出願可能。研究実績等によって出願コースを決める。たとえPhDコースに出願しても、研究実績等によってMasterコースから入学することを条件に合格するようなこともある。Masterコース終了後に進級テスト(口頭、書類)があり、PhDコースに進学することができる。通常Master(1~2年)、PhD(3~4年)、で終了する。PhDとMasterコースが分かれている場合は、Masterコース終了後に他校のPhDコースに出願する必要がある。
【イギリス】
通常PhDコース(博士課程)とMasterコース(修士課程)は分かれているため、どちらに出願するか決める必要がある。通常Master終了後にPhDコースに出願する必要がある。Masterコース(1年間)、PhDコース(3年間)で終了する。
もし貴方が、
「英語で研究実績と研究希望分野に関しては解説は可能か?」
YESなら、是非直接PhDコースを目指して下さい。
NOなら、Masterコースから開始することをお勧めします。特にアメリカのジョイントコースに入学することができれば、学部内テストのみでPhDに進学することが可能です。
Masterコースは基本的にクラスを履修することで進みます、そのため、日本の理系大学の3~4年次と変わらないスタイルとなります。ただ最後に修士論文を作成しますので、Masterコース内で「英語で研究実績と研究希望分野に関して解説が可能」になることができます。もちろん通常Masterコース中には履修したクラス分の費用がかかってしまいますが、Masterコース後にPhDを目指すことができます。PhDコースでは通常学費はかかりませんし、ティーチングアシスタント(TA)やリサーチアシスタント(RA)が可能な場合は給料が出ます。もちろん研究実績によっては学校から奨学金が出る可能性もあります。
もしMasterコース中の学費も払うことが難しい場合は、日本政府や各種財団などが行っている奨学金に応募する必要がありますが、大学の成績、英語力、研究実績等多くが問われるので、そもそもPhDコースに直接出願出来ない方がこういった奨学金を取得することは難しいのが現状です。ただ、もし貴方が大学時代の成績が非常に優秀で、研究実績や研究希望テーマがある程度決まっていたら、是非目指して頂ければと思い案す。
日本の理系大学院は、学術レベルは非常に高いにも関わらず、英語力などによって海外大学院への進学は非常に難易度が高くなってしまいます。特にTOEFLやIELTSといった英語力を測るテストの他、GREというテスト対策も行う必要があるため(米国大学院の場合)、諦めてしまう方も多いのが現状です。ただせっかく高い学術的バックグラウンドを持っていらっしゃるのですから、Masterコースから始めることも視野に入れて頂き、是非可能性を広げて頂ければと思います。